出世とキャリア制度

▮ 出世と学歴


日産化学で役員候補の出世街道を走るのは東京大学を筆頭とした偏差値の高い旧帝大系であり、木下小次郎社長も東京大学農学部出身者です。企業規模の割に高学歴者の巣窟となっており、入社するための就職偏差値は高いです。地方国立大学や私立大学出身者は出世という点では期待が薄いですが、ひたすら真面目に仕事をして、人事向けの課題を他人より頑張れば、誰でもある程度までは出世できます。

▮ 営業部門への異動


研究開発などの技術系の採用人数は多く、生物科学研究所や小野田工場、富山工場などに配属される社員が多いですが、使えないと判断されると数年で営業部門へ異動させられます。営業系から研究・技術系へ戻る人事はほぼないため、一方通行です。


▮ 研修と教育制度


日産化学が日産化学工業の頃から何十年も継続し実施している、悪名高いセルフスタート研修(SS研修)という研修があります。「自分が何をすべきか、自ら考え実行していく」セルフスタート型人材の基盤を築くことを目的に、技術系は入社後2年間、事務系は3年間をかけて、「オリジナリティをもった企画提案及び実行」に取り組みます。1年ごとに発表があり、部署によっては、報告書が修士論文よりも分厚いものになります。ポスター発表もあり、プレゼンは英語で行われます。もちろん、SS研修に関わっている時間は給料はでません。この研修期間中も、資格をとったり、通信講座を受講したり、TOEICを受けたり、さまざまな課題が課せられるため、プライベート時間がなくなるほど多忙で、若手社員にとっては日産化学はブラック企業に感じるかもしれません。研究結果のほとんどは人事向けのアピールで終わってしまいますが、これの出来で出世組・窓際族・保留か判断されてしまうため、SS研修は命がけでやる必要があります。

新入社員研修のほか、昇格前研修・語学研修などの義務的研修があり、国内外留学・通信教育といった自己啓発支援の制度もあります。グローバルに製品・サービスを提供していることから、外国の顧客が多く、海外出張やメール、監査対応等で英語を使う機会が多いため、TOEICはたびたび受験させられます。

各職場での教育は、基本的にOJTです。そのため、若手にもある程度の業務裁量権が与えられ、責任感の醸成や能力開発に役立っていると思います。


▮ 人事評価制度


人事制度については、比較的年功序列が残っている会社で、若いうちからあまり大きな差をつける会社ではありません。しかし、最近では年功序列型から能力評価制度への転換が図られています。人事評価は上司2名で行われ、周辺からの評価が加味されます。また、評価方法には自己評価が重視されるため、自分でアピールすればある程度の評価が付きます(もちろん実績が伴っていればの話ですが)。


▮ 研究開発


研究に関して自分の裁量で進められるため、思いっきり研究に取り組むことが可能です。元々、研究が好きでこの仕事についている人がほとんどなので、研究ができるということ自体にモチベーションを感じている人が大半です。


▮ キャリア採用は少ない


中途採用はほとんど行われておらず、新卒採用以外はほとんどありません。逆に言うと、社員の離職率は極めて低く、転職する人も少ないです。事業が安定しているため、終身雇用制度が保たれているためです。まれに30代の社員が中採採用で入社しますが、ほとんどの中途採用者は大手企業の部長クラスの人材で、日産化学の関連会社の部長として採用されています。

▮ 女性のキャリア


女性の基幹職(※管理職という言い方は廃止され、主査職以上は「基幹職」と呼ばれます)は何人もいるので、女性でも優秀でやる気があれば管理職を目指すことは可能です。以前は女性は昇進が遅れるのが一般的でしたが、今では少なくとも研究職については基本的に男女同格になっています。ただし、近年は性別を問わず主事職以上への昇進は競争が厳しく、相当な努力が必要となっています。そもそも女性の志望者が少ない業界・企業ですので、女性にとって有利な会社ではないと思います。